コロナ渦による自粛を受けて、「おうち時間」の投資としてペットを飼う人が増加。
それにともないペットにお金をかける傾向も見られています。
※出典元:ペット関連の支出(総務省統計局)
「赤色」がペット関連支出
今後もペット関連総市場規模は増えていくと予想されています。
そこで今回はペットサプリの開発についてお伝えしていきます。ペットサプリは聞きなじみのない方も多いかもしれません。この記事を機にペットサプリやその開発について知っていただければ幸いです。
ペットサプリ開発の流れ
最初にペットサプリの開発の流れについて紹介します。
1含める栄養素を決める
まずはペットサプリにどのような栄養素を含めるのか決めます。
人間は健康維持や疾病軽減のためにサプリを摂取しますが、ペットも同様です。摂取する目的は多岐に渡ります。もちろん、目的によってどのような栄養素を含めるのかも変わります。以下にサプリメントを摂る目的と、それに必要な栄養素の例を挙げました。
- ペット用プロテイン(足腰の弱い高齢ペット用):乳清 大豆タンパク アミノ酸 カルシウム
- 関節ケアサプリメント(歩き方に違和感があるペット用):ヒアルロン酸 グルコサミン コンドロイチン
- 肌ケアサプリメント(毛並みのケアに):ヒアルロン酸 コラーゲン
- 腸ケアサプリメント(お腹の調子が悪かったり、体臭が気になるなら):乳酸菌 難消化性デキストリン
- 口腔口臭ケアサプリメント(口や歯の健康に):乳酸菌 シャンピニオン オリゴ糖
- ダイエットサプリメント(太り気味のペットに):L‐カルニチン 乳酸菌
- 免疫ケアサプリメント(免疫力向上):乳酸菌 プロポリス アガリクス
- アイケアサプリメント(紫外線のダメージから守る、白内障を予防する):ブルーベリー アサイー ルテイン ※参考:ペット用サプリメント製造 – 岐阜県 多治見市 健康食品 化粧品 医薬部外品 受託製造メーカー アダプトゲン製薬株式会社 (adaptgen.co.jp)
まずはどのような目的のサプリメントを開発し、それにはどのような成分が必要なのかリサーチしましょう。
犬や猫に必要な栄養素を知ろう
サプリメントは食事では十分摂取できない成分を補うためのものですが、そもそも犬猫に必要な栄養素とは何なのでしょうか。ヒトについては家庭科で学習した方も多いと思いますが、ペットとヒトでは少し事情が違います。
1炭水化物
炭水化物は即効性のエネルギー源になります。ヒトと異なり、犬は必ずしも炭水化物を摂取しないといけないわけではありません。しかし、ドッグフードには炭水化物が含まれています。炭水化物は安価な上満腹感を得られるため、活動に必要なエネルギーを補いやすくしています。 また、猫の場合、炭水化物のうちの食物繊維は発酵作用に関わる重要な栄養素です。
炭水化物を過剰摂取すると、カロリー過多になり、体や臓器に脂肪が付くなど健康を損ないます。逆に欠乏すると、活動エネルギーが足りなくなるので疲れやすくなります。またタンパク質や脂肪を分解して足りないエネルギーを補おうと体が働くので、筋肉の減少や免疫機能の低下が生じます。
2タンパク質
タンパク質はアミノ酸が沢山つながった栄養素です。タンパク質を摂取すると体内でアミノ酸レベルまで分解され、それらのアミノ酸はまた新しくホルモンや毛、皮膚、爪、筋肉、腱、靭帯、軟骨をつくるのに利用されます。アミノ酸は動物の体内で合成することができる非必須アミノ酸と、合成することができない必須アミノ酸があり、特に必須アミノ酸は積極的に摂取しなければなりません。動物性タンパク質は植物性タンパク質より、必須アミノ酸が多く含まれているので、特に動物性タンパク質を含めるようにしましょう。
タンパク質は過剰摂取すると、脂肪に変換されて蓄積されてしまいます。またタンパク質から生じた窒素性廃棄物が過剰な場合、肝臓や腎臓に負担がかかります。一方タンパク質が欠乏(炭水化物が多くて相対的にタンパク質が不足)すると発育遅延、体重減少、生体機能の低下を招きます。
3脂肪
脂肪はグラムあたりの熱量が大きいため、体温維持に役に立ちます。他にも脂溶性ビタミンの吸収を助ける、体内では合成することができない必須脂肪酸の供給源となる、臓器や被毛の保護などの働きがあります。特にオメガ6脂肪酸やオメガ3脂肪酸は積極的に摂取する必要があります。
脂肪を過剰すると、急性すい臓炎になるおそれがあります。一方、不足すると繁殖機能が抑制される、被毛に光沢がなくなる、フケ症になる等の悪影響が出ます。
2試作(企業か研究機関かと協力も?)
どのようなペットフードを製作するか決めたら試作の段階に移ります。
サプリメントを個人で開発することは可能ですが、試作をするにあたっては専門の製造機械や知識が必要になりますね。OEM会社の中には製造だけでなく、試作や製品に関するアドバイスも行ってくれる会社があります。企業や研究機関と協力して開発するメリットとしては、専門知識をもとに適切な助言が得られること、企業が持っているデータ(話題の成分、売れ筋の成分、マーケティング戦略、顧客情報等)
またOEM会社の中には、個人でペットサプリを開発する人向けに複数製品を小ロットから受注してれるところもあります。試作を依頼する時は委託先の製造技術の他、採算が取れるかどうかについても考慮しましょう。
試作段階では、試作→モニター(犬や猫が食べてくれるかどうか 効用)→集計・評価 を繰り返します。ペットサプリの成分量の設定にあたって参考にしているものは、過去に実績のあった製品ですが、実験データが少ない場合はヒトの体重を基本として、ペットの体重に換算した値を用いていることもあります。
3製造
試作を繰り返して、納得のいくものにたどり着けたら、いよいよ製造に移ります。製品化するにあたって重要なのは、サプリメントの形状と包装デザインです。
形状
サプリメントの形状としては、打錠、ハードカプセル、顆粒、液体、ジュレが挙げられます。形状によって投薬する時のペットの反応が変わることがあるので、形状を考えるのは重要なことです。例えば、打錠やカプセルはペットに薬だと知られてしまうと飲みたがらない可能性があります。粉末や液体にすると餌に混ぜやすいので、飲んでもらえる可能性があります。いまいち市場の反応が予想しづらい時は対策として、最初は同じ成分で、複数の形態で製造することも1つの手です。
包装デザイン
包装は顧客の第一印象に関わるので、デザイン性は重要です、またペットサプリはペットフード安全法に基づく製品なので、製造者や消費期限、使用禁止の原材料等、法律に準拠して製品表示をする必要があるので、正しい製品表示か確認する必要があります。
ペットがサプリを摂る理由
ここまでペットサプリに開発について説明してきました。
しかし、そもそもなぜペットサプリが必要なのでしょうか。ペットフードで十分ではないのか、ヒト用のサプリメントをあげてはいけないのか。以下ではペットがサプリを摂る理由について説明します。
ペットフードで十分ではない?
昔と比べるとペットフードの質の向上、動物医療の進歩、飼育環境の改善によりペットの寿命は延びています。
ペットが高齢になると身体機能が落ちるため、沢山食べられなくなる、食べても消化機能が落ちているので栄養が十分に吸収できないことがあります。
高齢ペットの栄養補給としてサプリメントを活用することがありますが、健康なペットの場合、ペットフードなどの「総合栄養食」を与えれていれば基本的に栄養バランスは保てると言われています。そのため、サプリメントは「摂らないといけない」ものではなく、「必要に応じて摂取を検討するもの」であると考えましょう。
個人の判断のみで摂取させることは控え、獣医師など専門家に相談してからにしましょう。
※参考:【獣医師監修】犬や猫にサプリメントは必要?知っておきたいサプリメントの選び方と使い方|連載「獣医さんが教える愛犬・愛猫のごはんのキホン」vol.21 | ペットニュースストレージ(ペット保険のペット&ファミリー損保) (petfamilyins.co.jp)
ヒト用のサプリメントを与えてるのはNG
絶対にヒト用のサプリメントをペットに与えてはいけません。
確かに上記に「ヒトの体重を基本として、ペットの体重に換算した値を用いることもある」と書きましたが、それはあくまでも成分設定の目安であり、ペットサプリは成分の他に飲み込みやすい形状や体内吸収速度についても考慮されています。ヒトとペットでは消化機能、生理機能が異なるためヒト用のサプリメントをペットに与えると健康に悪影響が出るおそれがあります。
ペットにはペット用のサプリメントを与える必要性をご理解いただいた上でペットがサプリを摂る理由について紹介します。
ペットサプリ開発の注意点
最後にペットサプリ開発にあたっての注意点について説明します。
食品安全性に関する法律
ペットサプリはペットフードに含まれ、ペットフード安全法※によって管理されています。
※ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律:ペットフードの安全関係(ペットフード安全法 事業者のみなさま向けページ):農林水産省 (maff.go.jp))
法律では届け出の義務、表示の基準、成分規格、製造方法の基準、帳簿についての基準について定めています。
特に広告については消費者に誤った認識を与えないように十分注意する必要があります。獣医学や栄養学の専門家の他に法医学の専門家の助言を受けるなど、規制違反しないようにしましょう。
栄養バランス
法律を遵守して安全性が保たれたサプリメントであっても、服用方法を誤ると効果は出ません。さきほど「総合栄養食を与えていれば基本的に栄養バランスは保たれる」と書きました。しかし、どうしてもサプリメントを使わないといけない場面も出てくる可能性があります。このことを理解した上で開発する必要があります。ではどのような点に気を付けるべきでしょうか。「過剰摂取」と「相互作用」がキーワードになります。
1.過剰摂取
現在は様々な種類のペットサプリが売られており、何種類ものサプリメントを与えている飼い主もいます。
しかし、サプリメントの形状が少し違うだけで、実際は似たような成分が含まれており、結果として過剰摂取になる恐れがあります。サプリメントを与える時は成分をチェックし、重複していないか気をつけましょう。またサプリメントはおやつと一緒でカロリーがあります。サプリメントを摂りすぎでカロリー過多になりすぎるのには気をつけましょう。
2.相互作用
複数のサプリメントや薬を服用する時は相互作用や副作用(副反応)のことを想定しましょう。
サプリメントは与えれば効果が足し算になるわけではありません。副作用が考えられる場合は摂取を控えたり、優先順位をつけることを心がけましょう。サプリメントの包装に具体的な副作用のおそれを書き尽くすことは難しいところもあるので、迷ったら獣医師や専門家に相談するようにしましょう。
まとめ
今回はペットサプリの開発の流れ、ペットサプリの必要性、開発する際の注意点について説明しました。
ぺトプロには獣医師が在籍しており、お客様の商品開発の助言や監修を行っております。ペットサプリを開発したいとお考えになった方はどうぞお気軽にご相談ください。