ペット商品と聞いて真っ先に思いつくのはやはりペットフード。
以前の記事ではペットフード開発の流れについてご紹介しました。
今回はペットフードの製造工程について詳しく解説していきます。
ペットフードの種類
最初にペットフードの種類についてご紹介します。
実はペットフードと言ってもドライフードとウェットフードの2種類に大別できます。
まずは各フードにはどのような特徴があるか説明します。
1.ドライフード
おなじみのカリカリとしたドッグフードやキャットフードはドライフードです。
ドライフードとは、水分含量が10%以下のものを指します。
乾燥しているため保存性に優れ、また総合栄養食として扱いやすいことも特徴です。
またフード中の水分が多いとカビが生える原因となるため、原則水分含量は10%ほどです。
一方でソフトドライフードという水分が25%ほど含まれたフードもあります。
ソフトドライフードの場合はしっとりとした食感を出すために湿潤調整剤を用いて水分を増しています。
2.ウェットフード
ウェットフードの場合水分が80%以上含まれています。
ドライフードは主食(総合栄養食)用として開発されることが大半ですが、ウェットフードはおやつ、間食用として開発されることが多いです。
ドッグフードと異なり一度開封すると保存がきかないので、その場で食べきることを想定しています。
未開封でも水分が多い以上、カビが生えてしまう恐れがあるので工程には注意が必要です。
ペットフード製造の流れ:ドライフード
ドライフードとウェットフードの違いをご理解いただいたところで、次はペットフード製造の工程について見ていきましょう。
まずはドライフードです。
ドライフード製造の工程は
- 原材料の粉砕
- 計量・加熱・成形
- 乾燥・冷却・コーティング
- 包装
となります。
1.原料の粉砕
最初に原材料を粉砕します。
一般に粉砕の目が細かいとより質の良いペットフードが作れると言われています。
粉砕することで食感が良くなるだけではありません。
工程の段階で水と絡めやすくなる、加熱しやすくなる、機械の目詰まりを防ぐ、デンプンやグルテンの効果を引き出す、消化率を上げるといった様々な効果があります。
2.計量・加熱・成形
次に原料、添加物、水を加えて撹拌機で混ぜていきます。
ここでの分量が適切でないと栄養素が不均一になったり、重要な栄養素が欠如するおそれがあるので計量は正確に行いましょう。
機械によっては、適切に配合されているかモニタリングしながら作業を進めるものもあります。
計量が済んだら、「エクストルーダー」という加熱と成形を行える機械に移します。
エクストルーダーの中は高温、高圧で微生物を殺すとともに、必要な栄養素を分解してしまう酵素を不活性化する役割もあり、加熱をしたのち、原材料をところてんのように押し出して成形を行います。
※1-4.ペットフードの加工目的と一般的製造方法(ペットフード公正取引協議会)
3.乾燥、冷却、コーティング
エクストルーダーから取り出したばかりのフードはとても高温である上、水分が20%です。
粗熱を取るためにチューブのような装置の中を通し、「スパイラルフリーザー」という温度制御装置に移します。
乾燥させるときは低温から高温にすることで外側だけ乾燥してしまい、中に水分が残る状況を防ぐことができます。
十分に乾燥、冷却ができたら、フードの表面に油やフレーバーを付加して嗜好性を高めるコーティングを施しましょう。
4.包装
コーティングまで行ったら、
- 金属等の異物が混入していないか
- 風味に異常がないか
- 形状がそろっているか
を検査したのち包装していきます。
最初にドライフードの品質を保つための脱酸素剤を加えたり、賞味期限の表示を行い完成です。
ペットフード製造の流れ:ウェットフード
次にウェットフードの製造の流れについてです。
先ほど少しご紹介しましたが、ウェットフードとドライフードでは同じペットフードとはいえ若干工程が異なります。
ウェットフード製造の流れは以下のようになります。
- 原料解凍
- 蒸煮、冷却
- クリーニング
- 充填
- 加熱殺菌、冷却
- ラベル巻き
1.原料解凍
最初に原料の解凍を行います。
ドライフードと異なりウェットフードの原料は嗜好性を重視してるため、生あるいは冷凍のものが多いです。
生ものであるため適切な管理下に置き、半解凍や腐敗に注意しましょう。
2.蒸煮、冷却
解凍した原料(生の場合はこの工程からです)を蒸煮します。
蒸煮とは、漢字の通り蒸気で蒸したのち、煮る工程です。
蒸煮した材料はクリーニングにかける前に冷却します。
3.クリーニング
クリーニングとは材料に含まれている内臓や小骨、皮等食べるのに適さない部分を取り除く工程のことです。
目視確認や除去装置で取り切れなかったものは金属探知機を使って検出することもあります。
4.充填
原材料をカットして必要なもの(添加物等)を加えて混ぜ合わせたのち、缶やパウチに充填します。
密封する前には空気をしっかり抜きましょう。
空気が十分に抜けていないと、水やバクテリアによって汚染されたり、風味が損なわれるおそれがあります。
5.加熱殺菌、冷却
充填したフードを容器ごとレトルト釜で加熱(加圧)殺菌します。
ドライフードでは充填前に加熱殺菌をしていましたが、ウェットフードは容器に入れてから加熱殺菌するのが特徴です。
また品質低下を防ぐために加熱後はすぐに冷却する必要があります。
6.ラベル巻き
最後に出荷するために包装を施し完成です。
缶類は強い衝撃によって容器が変形するおそれがあるので取り扱いには注意が必要です。
ペットフード製造に関わる法律
ペットフードを製造するにあたってどのような法律が関わってきているのでしょうか。
以下に主な法律を紹介します。
ペットフード安全法
ペットフードに関する法律の中では最も知名度が高いので、名前はご存知の方も多いのではないでしょうか。
正式名称は、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)。
ここでのペットとはエキゾチックアニマルは含まれずイヌネコのことです。
ペットフード安全法ではペットフードの製造にあたっての成分、輸入物質、ラベルの表示、宣伝について等幅広く規定を敷いています。
更に同法では、ペットフードを製造するには都道府県の地方農政局に届出義務があると定めています。
もともと食品製造を行っていた会社がペットフードを製造する時にも届出をする必要があるので注意しましょう。
参考元:ペットフードの安全関係(ペットフード安全法 事業者のみなさま向けページ):農林水産省 (maff.go.jp)
と畜場法
と畜場法ではと殺場やと畜行為に関する規定を定めています。
と畜場法は主に(ヒトの)食肉の食品衛生に関わる法律です。
しかしペットフードの原料の中にはと畜場由来のものもあるため、農林水産大臣が承認したと畜場で処理された安全な肉がペットフードに供給されるようにも規定しています。
※参考元:○と畜場法(厚生労働省)
家畜伝染病予防法
家畜伝染病予防法とは家畜の伝染病の予防、蔓延防止のための法律です。
ペットフードの原料の流通過程で家畜由来の汚染物質が混入する可能性があります。
過去には国内でもウシの牛海綿状脳症が大問題になりましたが、細心の注意を払っていてもこのようなリスクがあることを把握しておく必要があるでしょう。
食品衛生法
ペットフードは法律の分類上食品には当たりませんが、食品衛生法で規定された添加物を使用する場合はこの法律に留意する必要があります。
計量法
内容量の誤差範囲は計量法によって定められています。
また、使用する計量機器もこの法律で規定されています。
PL法
PL法は正式には製造物責任法と言います。
この法律では製造者の損害賠償について定め、消費者を保護しています。
必要に応じてパッケージに警告表示を記載する等対策を行い、トラブルを防ぎましょう。
※参考元:ペットフードの製造方法|一般社団法人ペットフード協会 (petfood.or.jp)
ペットフード製造で注意する点
ペットフード製造で注意することは以下のようなものが挙げられます。
- 油の酸化
- 生、加熱不十分による食中毒
- タンパク質の腐敗
- 栄養基準の逸脱
- 栄養素の過剰症や欠乏症
工場や機器の衛生管理はもとより、万が一に備えて原因が特定できるよう工程ごとにサンプリングをするとよいでしょう。
※参考元:ペットフードの安全関係(ペットフード安全法 事業者のみなさま向けページ):農林水産省 (maff.go.jp)、ペットフードからのサルモネラの検出について(注意喚起) – 独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)
まとめ
今回はペットフードの製造の流れについてご説明しました。
イヌネコの高齢化やライフスタイルの変化により、ペットフードのニーズは多様化し今日様々なペットフードが出回っています。
ペトプロには獣医師が在籍しており、専門的な知見からアドバイスを行うことが可能です。
「こんなペットフードを開発したい」「ここにこだわりたい」とオリジナルのペットフード開発にご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。