現在、日本国内のペットビジネスの市場規模は1兆7000億円以上※にも及びます。
飼育頭数は減少傾向にあるものの、一匹一匹のペットをより大切にする飼い主の方が増えており、それに伴い様々なペットビジネスが台頭しつつあります。
しかし、ペットビジネスには
- ペットショップのシステムの問題点
- 人為的な交配による遺伝病の危険性
- ペットフードの安全性への懸念
など、闇の部分もあります。
この記事では、犬・猫を中心にペットビジネスの闇の部分について解説していきます。
※ペットビジネスに関する調査を実施(2022年) (矢野経済研究所)
ブリーダーによる過剰繁殖とペットショップ流通の問題点
日本国内のペット販売については、動物愛護管理法「第一種動物取扱業者の規制」※により規制されています。
動物*の販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で行う場合は、営業を始めるに当たって登録をしなくてはなりません。
代理販売やペットシッター、出張訓練などのように、動物の所有や飼養施設がない場合も、規制の対象になります。
引用元:第一種動物取扱業者の規制(動物愛護管理法)
改正による改善が見られるものの、未だに問題点が多くあると言われています。
利益優先の過剰・大量繁殖
ブリーダーの元で生まれた子犬や子猫は、ペットオークションで落札されてペットショップにやってくるケースもあります。
ブリーダーがペットを販売する主な方法
- 消費者に直接販売する
- ペットショップに販売する
- ペットオークションを通じてペットショップに販売する
- 卸売業者に販売する
ブリーダーは犬猫を売れば売るほど儲かるため、利益を最優先し無秩序に大量繁殖を行う悪質なブリーダーも存在します。
適切な繁殖回数を越えて繁殖させると、母犬・母猫に大きな負担がかかります。
飼育環境が劣悪な場合は、感染性疾患が増加することも。
また、幼い方がペットショップで売れやすくブリーダー側の飼育コストも抑えられるため、子犬や子猫は産まれてから1ヶ月ほどの離乳時期に親から引き離されることなります。
その結果、母親との関わりで学ことができたコミュニケーションを学ぶ大切が奪われ後の問題行動に繋がることが考えられます。
※参考元:ペット業界の深い闇…子犬や子猫を量産するヤバいブリーダーがいる現実(現代ビジネス)
衝動買いによる飼育放棄や遺棄
日本のペットショップでは、子犬や子猫がガラス張りのケースに入って販売されています。
こうした生体販売は衝動買いを助長する可能性もあり、最後まで責任を持って飼わずに飼育放棄や遺棄に繋がることもあります。
※参考:ペットショップの闇。大量生産された子犬・子猫の残酷な現実(日刊SPA!)
引き取り屋の存在
ブリーダーの元やペットショップで売れ残った個体を、お金をもらって引き取る「引き取り屋」という業者も存在します。
引き取った後は転売したり、繁殖可能な個体を自ら繁殖させて売るなどの商売をする人もいるよう。
転売も繁殖もできない個体は劣悪な環境で放置されて死んでしまうこともあります。
※参考元:ペットショップで売れ残った犬猫はどうなる?規制や私たちにできることも(Spaceship Earth)
人為的な交配による遺伝病
- 純血種に見られる品種特有の遺伝性疾患
- ハイブリッドドッグにみられる遺伝病
遺伝病という問題点もあります。
純血種に見られる品種特有の遺伝性疾患
犬も猫も純血種は品種特有の遺伝性疾患を持っていることがあり、猫よりも犬の方がさらに多いです。
遺伝性疾患とは、遺伝子が変異することによって引き起こされる病気のことで、変異した遺伝子が親から子へ引き継がれることによって病気が遺伝します。
日本の犬の遺伝性疾患は世界でも突出して多いそうです。
マスメディアなどの影響で特定の品種に人気が集中し、無秩序に繁殖させているためと指摘されています。
例えば、ミニチュア・ダックスフンドでの椎間板ヘルニア、柴犬での若年性白内障、アメリカンショートヘアーの肥大型心筋症などがあります。
また、スコティッシュフォールドの折れ耳は、骨軟骨形成不全という疾患により、耳の軟骨が硬くなり前方へと垂れ下がったものです。
そのため、前足や後脚に骨瘤(こぶ状の隆起)ができやすく、骨瘤ができると脚を引きずって歩くようになり、鈍痛に苦しみ続けることもあるそうです。
参照元:犬の遺伝性疾患について(公益社団法人埼玉県獣医師会)
遺伝性疾患のほとんどが慢性、再発性のもので、生涯治療を続ける必要があります。
ハイブリッドドッグにみられる遺伝病
純血種同士を交配させたハイブリッドドッグにも遺伝病が見られることがあります。
例えば、ラブラドールとプードルから産まれた「ラブラドゥードル」は、この二種に共通する股関節形成不全や眼病を発症する可能性が高いと考えられています。
※参考元:芸能人にも大人気「ハイブリッドドッグ」に隠された、「残酷すぎる現実」(マネー現代)
日本のペットフードの危険性
ペット先進国とされる米国では、ペットフードを含む動物用飼料は、「食品安全強化法(The New FDA Food Safety Modernization ACT:FSMA)」によって、人間用食品と同じ基準で安全性が確保されています。
一方、日本には愛がん動物の犬・猫用のペットフードの安全性を確保するために「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称・ペットフード安全法)」があります。
食品安全強化法 | ペットフード安全法 |
---|---|
アメリカ | 日本 |
人間用食品と同じ基準で安全性が確保 | 人間用食品より安全基準が低い |
ペットフード安全法は、人間用食品より安全基準が低いため、人間用食品では使用が禁止されている原材料や添加物が使用されているものもあります。
体への悪影響が懸念される物質がより多く含まれている場合があるようです。
酸化防止剤
酸化防止剤として使用されることがあるBHT、BHA、エトキシキンは動物実験において、発がん性や毒性などが認められておりなかでもエトキシキンは人間用食品への使用が禁止。
安く大量のペットフードを作るために、有害な酸化防止剤や保存料が多く使われている場合があるとのことです。
※参考元:今だから知りたい、ドッグフードの酸化防止剤エトキシキンやBHA、BHT とは。(POCHI)
合成着色料
発がん性やアレルギー反応の危険性が指摘されている合成着色料を含むペットフードもあります。
着色料は見た目を良くするために使用されますが、犬や猫は視覚より嗅覚が優れているため、見た目はあまり重要ではありません。
購入者の飼い主にとって美味しそうに、美しく見せるために使用されていると言えます。
病気の動物の肉や骨を使用
動物性の脂をとった後の肉や骨などを加熱、乾燥、粉砕し、パウダー状にした「ミートミール」を含むものもあります。
パウダー状でどんな肉や骨を使っているかわからないため、人間用食品の安全基準を満たさない低品質のものや、病気の動物の肉や骨が使用されている可能性があるのです。
※参考元:ペットフードに関する法令~日本と米国の違い~|ヒューペル
ペットビジネスの闇に立ち向かうためにできること
犬や猫の飼い主としてできることは、
- ペットビジネス、ペット業界の問題点や課題を知る
- 犬や猫を買いたいときは保護犬、保護猫を引き取る
- SNSなどで飼育環境や飼育個体を公開している良心的なブリーダーから直接買う
- ペットの遺伝子検査をすることで、発症しやすい遺伝病を把握し、予防・改善に生かす
- 無添加、または添加物の少ないペットフードやおやつを買う(高品質のペットフードは値段が高いので、週に1回から取り入れるなども検討)
など。
ペットビジネス事業者にできることは、目先の利益を最優先にせず、ペットにとって本当に良いシステムの構築・サービスの提供に努めることです。
動物は生きている命であることを再認識し、動物の健康第一で事業に取り組むことで飼い主からの信頼も得られ長期的な利益に繋がるでしょう。