ペットフード産業の出荷総額は3,875億4,600万円で、対前年比110.1%と7年連続の増加を示しています。
ドッグフードに関しても、対前年比110.7%である1,607億1,100万円と増加しています。
犬用の出荷額は対前年度比 110.7%と増加し、猫用の出荷額も対前年度比 109.7%と増加
しました。犬・猫用を除く、その他のペット用も出荷額は、対前年度比 108.8%と増加しました。
※引用元:1. 出荷金額 : 用途別_2022(令和4年)年度ペットフード産業実態調査の結果について(一般社団法人ペットフード協会)
これは一般社団法人ペットフード協会が2023(令和5)年12月に発表した最新の調査結果によるものです。
※参考元:2022(令和4年)年度ペットフード産業実態調査の結果について(一般社団法人ペットフード協会)
そこで今回の記事ではドッグフードのOEMを行う際の流れとポイント、注意点について解説します。
ドッグフードのOEMの流れ
- 問い合わせ・依頼
- 商品の企画・提案
- 試作・改良
- パッケージ選定
- 契約・製造開始
- 分析・検査
- 納品・商品販売
他の商品をOEMする場合と基本的な流れは同じです。
問い合わせ・依頼
まずはドッグフードのOEMメーカーへの問い合わせです。
同じOEMを行う会社でもメーカーによって、取り扱っている原料や配合、フードの形状、製造実績、製造設備は異なります。
問い合わせの際には商品イメージについて相談し、企画が実現可能かどうか予め確認しておきましょう。
一般的に販売されているドッグフードの分類・形状としては、以下があります。
種類 | 具体例 |
---|---|
成長段階別種類 | ペット用ミルク、離乳食、幼犬食、成犬食、高齢食 |
水分含有別種類 | ドライフード、ソフトドライフード、セミモイストフード、ウェットフード |
目的食別種類 | 総合栄養食、間食、その他の目的食 |
形状別種類 | 粉体、顆粒状、被膜状(フレーク)、発泡状、クランブル状、ビスケット状、棒状、液状 |
商品特徴別種類 | 粒形態別分類…プレーンタイプ、ミックスタイプ価格帯別分類…エコノミータイプ、プレミアムタイプ |
商品の企画・提案
OEMメーカーと商品の企画・提案を行います。
検討が必要な項目は以下の通りです。
- 原料の選定、配合率、栄養バランス、形状
- パッケージデザイン、形状
- ターゲット層
- 数量
- 納期
- 予算
- ロット
など
ドッグフードをOEMで製造するメリットの一つに、商品開発やマーケティングのサポート体制が挙げられます。
ペットフードの製造開発は安全性の確保が重要であるため、専門知識に基づき商品のリスク低減を図ることが大切です。
※参考元:「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(ペットフード安全法)(環境省自然環境局総務課動物愛護管理室)
試作・改良
打ち合わせた内容をもとに、ドッグフードの商品を試作します。
完成した試作品について、以下の項目をチェックし必要に応じて改良を繰り返します。
- 水分、タンパク質、脂質などの栄養成分が設計通りになっているか
- 味付け、香り、食感
- 嗜好性
- 製作コスト
など
パッケージ選定
試作品のチェックと並行して行うのが、パッケージデザインの選定です。
ドッグフードの商品パッケージには以下のような種類があります。
箱 | 紙箱が多く、プラスチックフィルム袋の中に内容物が入っている。ドライフードに多く使用される。 |
袋 | 紙とプラスチックフィルムの袋や複合袋がある。 |
金属缶 | ウェットフードに多い。粉ミルクや離乳食に用いられることも。アルミニウム製、スチール製、両者の複合缶がある。 |
トレー缶 | アルミニウム材質のトレー缶。ウェットフードのみに用いられる。 |
レトルトフィルム袋 | ウェットタイプに多い。 |
また2022年に行われたアンケートでは、ペットフード選定時の参考情報源として商品パッケージの説明が挙げられました。
※参考元:ドッグフード・キャットフードに関するアンケート(第4回)(MyEL)
ドッグフードのパッケージをデザインする際は、特徴的なブランドロゴや商品名・色使いや写真などで商品の魅力を引き立て、消費者の手に取ってもらえるよう心掛けることがポイントといえます。
契約・製造開始
ドッグフードのレシピや内容量、パッケージなど全ての仕様が決まったらメーカーと生産方法をすり合わせていきます。
商品の企画設計とズレはないか、納期や品質、コストを含めて綿密な確認が大切です。
最終見積もりに問題がなければOEMメーカーと契約し、製造を開始します。
分析・検査
安全性の高いドッグフードを作るためには、製造過程での分析・検査が欠かせません。
例えば、以下のような検査を行います。
検査項目 | 内容 |
---|---|
官能検査 | 五感を使って、原料の色や匂いなどを確認する検査。 |
原料の栄養成分検査 | 原料の水分、タンパク質、脂質、粗繊維、灰分を測定する。ペットに適切な栄養成分が含まれているかを確認する検査。 |
粒の物性検査 | ペットフードの粒や厚さを測る検査。ペットが食べやすい大きさ、形になっているかを確認する。 |
安全性検査 | サルモネラ菌など有害な微生物がいないか、衛生面の検査。有害物質が入り込まないよう原料の段階からチェックし、安全性を確保する。 |
納品・商品販売
最終検査後、完成したドッグフードの納品・販売開始です。
ペットフードの販売開始後も商品に対する消費者の反応を確認し、売上増加のための改善策を見出していきます。
評価・改善を繰り返し行い、市場のニーズに合う商品を継続して提供することがポイントです。
ドッグフードのOEMのポイント
- 栄養バランスを確保する
- 市場ニーズを把握する
- 販売チャネルを確保する
ここまではドッグフードのOEMを行う際の流れについて説明してきました。
次は、事業としてドッグフードのOEMで成功するためのポイントについて、解説します。
栄養バランスを確保する
ドッグフードをOEMで開発・製造する際は、栄養バランスの確保が大切です。
犬は人間とは異なり、自分自身で食事を選択できないため、栄養の摂取源は基本的に飼い主から与えられる食事のみとなります。
そのためドッグフードは栄養に偏りが出ないよう、一定で安定した栄養成分を含有している必要があります。
※参考元:1-2.ペットフードと食品との違い(ペットフード公正取引協議会)
以下は犬に必要な6大栄養素です。
栄養素名 | 特徴 |
---|---|
蛋白質 | 毛、皮膚、爪、筋肉、腱、靭帯、軟骨などを作るアミノ酸を供給する。多くのドッグフードには動物性と植物性の2種類の蛋白質が入っている。 |
脂肪 | 体温維持脂溶性ビタミンの吸収を助ける必須脂肪酸の供給食物の嗜好性を高める皮膚や被毛を美しく保つなどの役割を果たす。 |
炭水化物 | 即効性のエネルギー源であり、不足すると疲れやすくなる。過剰だと肥満を招き、様々な疾病につながる。 |
ビタミン | 体調を整える役割。体内で合成できないため、食べ物から得る必要がある。 |
ミネラル | 体調を整える役割。必要量は極めて微量だが、なくてはならない栄養素である。ただし、過剰摂取とならないようバランスが重要です。 |
水 | 体液平衡をつかさどる。水分不足による脱水は消化器系・呼吸器系・泌尿器系に致命的な打撃を与えることがある。動物は体内の総水分の10%が失われると危篤状態となり、15%が失われると死に至るとされる。 |
各栄養素の必要基準量はAAFCO(米国飼料検査官協会)が提言しています。
AAFCOの栄養基準は世界的なスタンダードの一つとなっているため、ドッグフード設計時の参考にしてみてください。
※参考元:AAFCO2016年版における犬猫の栄養素プロファイル概要(前編)(追田順哉、ユニ・チャーム株式会社)、AAFCO2016年版における犬猫の栄養素プロファイル概要(後編)(追田順哉、ユニ・チャーム株式会社)
市場ニーズを把握する
ドッグフードのOEMで成功するためには、市場ニーズの把握も大切なポイントです。
2024年に行われたアンケート調査では、価格帯が同じであれば本当に与えたいドッグフードとして市販の手作りフードが挙げられました。
■販売価格が同じだったらどんなドッグフードを与えたい?
- 市販の手作りフード(ココグルメやペトコトなど):200人
- ドライフード:146人
- ウェットフード:82人
- 半生フード:66人
- フリーズドライフード(K9やWOOFなど):56人
- エアドライフード(Ziwiやitiなど):28人
※複数回答、回答数578
※参考元:飼い主が本当に与えたいドッグフードは?【飼い主453人アンケート】(PR TIMES)より抜粋
販売価格が同じだった場合、与えたいドッグフードで最も多い回答は「市販の手作りフード」200人(全体の44.1%)でした。
市販の手作りフードとは、飼料原料を使わず保存料無添加の国産食材を使用し、低温加熱・急速冷凍で製造するドッグフード(フレッシュドッグフード)のことです。
たとえば現状、以下のような商品が販売されています。
フレッシュドッグフードは近年のペットの家族化の影響で、ドッグフード市場の中でも成長が著しい分野です。
※参考元:【成長するペットEC市場〈フレッシュドッグフード編〉】(日本ネット経済新聞)
販売チャネルを確保する
ドッグフードOEMでは販売チャネルの確保も大切なポイントとなります。
チャネルとは商品を顧客である消費者に届けるための経路のこと。
ドッグフードOEMをビジネスとして成功させるには、顧客ニーズに合った商品を製造し、それを適切なマーケティング施策や販売チャネルで提供することが不可欠です。
販売チャネルを確保する際には以下の3点を押さえておきましょう。
- 販売するターゲットを明確にする
- 対象とする顧客との接点が増える販売チャネルを選ぶ
- 適切な販路であるかを確認する
OEMメーカーによっては、マーケティングに関するノウハウを持っていたり、メーカー自身の持つ販路を活用できるケースもあります。
ドッグフードのOEMにおける注意点
- 安全性を確保する
- 関連する法律について理解する
- 商品のリスク管理を行う
最後にドッグフードのOEMにおける注意点について解説します。
安全性を確保する
ドッグフードを製造・販売する際には、ペットフード安全法を遵守する必要があります。
ペットフード安全法とはペットフードの安全性を図り、ペットの健康保護と動物の愛護に寄与することを目的とした法律です。
この法律では以下の項目について定められています。
- ペットフードの基準・規格の設定及び製造等の禁止
- 有害な物質を含むペットフードの製造等の禁止
- ペットフードの廃棄等の命令
- 製造業者等の届出の義務
- 帳簿の備付けの義務
- 報告徴収、立入検査等
関連する法律について理解する
ドッグフードを製造する際には、ペットフード安全法以外にも理解しておくべき規定があります。
たとえば、以下の法律です。
法律名 | 規定内容 |
---|---|
と畜場法 | 農林水産大臣が承認したと畜場で処理された、安全な畜肉原料等を利用するよう規制している。 |
家畜伝染病予防法 | 家畜の伝染性疾病の発生を予防し、まん延を防止することにより畜産の振興を図るものであり、利用する畜肉原料はこの法律でコントロールされた安全なものを利用する。 |
食品衛生法 | ペットフードは食品ではないが、この法律で規定された食品添加物の一部がペットフード用として利用されている。 |
計量法 | 内容量については、計量法に定められている誤差範囲内であることが必要。使用する計量器は同法により管理されている。 |
PL法 | 製造する商品は、利用者の安全性に充分に配慮したものでなくてはならず、その責任は製造業者側にある。必要に応じてパッケージ等に警告表示を記載する。 |
製造方法や成分規格、表示基準を守り、ペットの健康リスクに対応する必要があります。
商品のリスク管理を行う
厳しい検品作業をクリアした商品でも問題が生じる可能性があるため、商品のリスク管理が重要です。
リスク管理の一つの方法として、獣医師や大学と連携し、商品に対するリスクを低減するケースが挙げられます。
獣医師・大学と連携することのメリットは、専門家による成分分析や品質証明によって、商品の安全性を高められる点です。
またトラブル発生時には自主回収や返品、交換などの対応を行うことになりますが、OEMメーカーによってサポート体制にも差があります。
商品トラブルはブランドの信用力にも関わるため、トラブルの際の費用の負担やサポート体制については、事前の取り決めが重要です。
まとめ
ドッグフードOEMの流れとポイント、注意点について解説しました。
ドッグフードのOEMを行う際には、製造経験・実績があり、法律に関する知識を持っているOEMメーカーを選ぶ事がポイントになります。